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2021年05月24日(月)更新

羽衣の牡丹?

先日古い友人からメールがあり、その中に「お能の中に良く花が出てくるが知っていますか」と書いてありました。
あまり見ていませんが、そういえば、有名な「羽衣」の中に出てくるシテの天女の冠は流派によってはその冠の正面に大きな花が付いているものを使っています。
松の木の枝にかけておいた羽衣を漁師の白竜がそれを見つけ家に持ち帰ろうとすると、天女が現れ、その羽衣がないと天に戻ることが出来ないと大いに嘆きます。その情景を地謡が「涙の梅雨の玉鬘、挿頭(かざし)の花もしをしをと、、、、」と謡います。友人がそのこと指していたかどうかわかりませんが、私が花を扱う仕事をしているという事で連絡してくれたのでしょう。
「挿頭の花もしをしを」とありますが、天に戻れないかもしれないと感じた瞬間、頭に挿してある花が萎れてくるのが、天女の気持ちと一体になっているのがわかります。それではなんの花なのかと思いましたが、客席から見る限り作り物ではありますが、どうやら蓮か牡丹ではないかと思います。つぼみからフルに咲く手前の状態です。

その後、あまりに天女の嘆きの深いことから白竜は羽衣を返しますが、舞を見せてくれればという条件を付けました。更に先に羽衣を返すとそのまま天に昇ると疑います。よって舞を見せてくれた後、返しましょうという事になりましたが、その時天女は「疑いは人間にあり、天に偽りなきものを」と謡います。
この言葉に白竜は大いに恥じ入り羽衣を返します。天女は返してもらった羽衣を羽おり、舞うことになりました。序の舞ですが羽衣最高の見せ場です。
過去に一度だけ経験しましたが、舞の最後のころ橋掛へ移った天女が本当に天に帰る様に演じる人がいましたが、かなり感激しました。